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12+1~treize/05【Rad*Geof】

『treize』は当初きっちりと話を固めてしまうのではなく、想像し創造する余地を持たせる作品にしようとしていた為に、treizeの世界観やキャラクターの人物像と関係性を伝えるように書いたお話です。

キャラクターについては、イラストの記事で少し説明してあります。

【創造】【維持】【破壊】

今回は、RadとGeofの関係描写。とても短いです。



作:琥誉啓人



ギンッ

射抜く、と言う言葉はこの事を指すのだろう。
視線に刃が付いていたならば、自分は既にこの世の者では無かった筈だ。
甲冑に包まれていても、その内の肉体の頑強さを思わせる立ち姿は、長身の自分よりも悠に頭一つ大きい。

そうだ、あの地下道、自分が神官達の目を盗んで夜の街に抜け出る時に通る、その入り口となる扉は、小間使いの女達が籠を下げて通る程の大きさで、常々通り抜けるのに苦労する物だが、どうだこの男に至っては、無理に入ろうと身体を捩れば、そのまま痞えて巨大な栓の様になるのではないか。

最高の技術を持って、最高の材料で作られた、最高の鎧。
それを纏った、戦士として最高だろう身体。

何と豪華な栓だろう…

クツクツ、と鳴ったのはどうやら自分の喉らしい。

ギラリ

音を立てそうな勢いで睨み付けて来るこの男は、どうやら今の自分の所作が気に入らなかったらしい。否、自分の存在自体が気に入らないらしい。

はて、自分は何かしただろうか…?

と、言うよりも、

「………あ~、えっと、ギュ…ギューヒ君だっけ?」

そう、確かそんな名前だった、と、思う。

「ギューフ、だ。」

何やら律儀に訂正してくれた様だが、それよりも、今は…

「あれ?もう君休んで良い時間じゃないかい?」

何より、

「そこ、退いてくれないと、入れないんだけど、な…?」

ガシャン
屈強な足が、一度、踏み鳴らされる。

カチャン
手に持った酒の瓶が、何処かにぶつかり小さく音を立てた。

「アンスール陛下はお休みだ。」

潜めているせいか、一段と低く地を揺らす様な声は、普通の人間ならばそれだけで心臓が止まりそうな気すらする物で。
位からして、絶対的に上である筈の自分にすら、臆さない所か敬意を払う気すら無さそうだ。

飼い主にしか懐かない大型犬。
しかも飛び切り凶暴なヤツだ。

「噛み付かれたら一溜まりも無いなぁ…」

ボソリ
呟いたら、一段と目が据わった、おお、怖い怖い。


目の前には今にも飛び掛って来そうな番犬が一匹。
手の中には飛び切り上等な酒の瓶が一本。


一瞬で、天秤は傾いた。


「おーい!アッちゃん!!アンスール!!!」


仕様が無いだろう、ノックをしようにも巨躯が前に聳え立って邪魔をするのだから。
正直、昼間の賑わいを失った回廊に反響する声は、ぞっとしない物があるけれど。

「き、貴様っ!!!」

直立不動を決め込んだ相手も流石に狼狽えたのか、妙な形に開いた口が小刻みに震えている。
なんだ、見た目よりも結構若そうだな、可愛いもんだ。

「土産持って来たよー!アンスール!!!」

「黙らんかぁっ!!!」

いや、黙った方が良いのは君の方だと思うけど…

既に状況を見失ったのか、流石に身体の大きさに比例して声も馬鹿でかい様で。

それより、
早く出て来てくれないと、本格的に血が流れそうだ………けど?


ギッ…

鈍く重い音、

「………全く、何をしているんだ?お前達。」

続いた溜息交じりの声に、独特の掠れが無い所から察するに、やはり寝てはいなかったのだろう。

an.jpg


「や、アンスール♪」

「ア、アンスール様っ!!!」

外に落ちた闇よりも深い漆黒の髪に光を滑らせ、ゆったりとした歩みで出て来る姿は、日中の豪奢な衣装とは違って、その肢体のしなやかさを直接的に視覚に感じさせる。
唯執務に明け暮れるのみでは身に付く筈も無い、一見緩やかに見えて隙の無い動き。

「ラド。…ギューフ。」

傾げた首、細めた瞳、甘い声。
己の肩辺りにあるだろう崇拝する“ご主人様”の頭よりも低く頭を下げて、今や狂犬は尻尾を丸めた犬ころの様だ。

…作戦成功。

どうやら、最善の策を選んだ様だ。天晴れ。

「お前達、本当に仲が良いな。」

ニヤリ

独特の、口角を持ち上げた笑みが浮かべば、それこそ、我が極上の友の姿。

「だっ…!誰がコイ…いやっ!!ラド…さ、様な、なんか…いや、そのっ!!!」

ガシャガシャと、甲冑を鳴らして狼狽えるギューヒ君を尻目に、自室の如く慣れた部屋に滑り込む。…むしろ自室よりも居る時間が長いかも知れ無い、が。
華美には感じられない、匠の卓越した技が触れた先から判る棚には、自分好みの酒が並ぶ。自ら持ち込んだ物も有り、友がさり気なく用意してくれている物も有り。
気に入った酒が切れそうになると、次の晩にはたっぷりと満ちた瓶が同じ位置に置いてあるものだから、「いい加減自室に戻れ」と、呆れた顔を見せる彼にも、説得力が欠けるというものだ。

カチャッン

手に取ったグラスは三つ。

誰からも慕われる我が親友は、きっとあの飼い犬を細やかな酒宴に招く事だろう。
外からは未だ諦めの悪い喚き声が聞こえて来る。

「飽き無いなぁ…」

呟いた、その調子に含まれる微笑に、自ら少し驚き、次の瞬間にはより濃い笑みを、今度は意識しながら浮かべた。





「…我が親友、と、その飼い犬に、乾杯!」



~fin.~
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[ 2009/09/19 23:14 ] オリジナル-小説 | Track back(-) | Comment(-)








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